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◆ 春分の日 ◆ 春分の日をやはらかくひとりかな 山田みづえ 春分の田の涯にある雪の寺 皆川盤水 春分の湯にすぐ沈む白タオル 飯田龍太 春分や手を吸ひにくる鯉の口 宇佐美魚目 春分の滑り台より眼鏡の子 桜井博道 木々の芽に春分の日の雨軽し 市ヶ谷洋子 ギターの音春分の日の寺にかな 藤井寿江 春分や足跡つづく峰の寺 深野夢路 春分を迎ふ花園の終夜燈 飯田蛇笏 春分の日なり雨なり草の上 林 翔 雨寒し春分の日を暮れてまで 篠田悌二郎 永すぎる春分の日の昼も夜も 江國 滋 ◆ 暖か ◆ 345春》時候 あらゝぎの芽思ひ寝る夜暖かき 富田木歩 いつしかに野の花の香の暖かし 阿部みどり女 しんがりをよろこぶ家鴨なり暖か 秋元不死男 よき流ありて暖か梅早し 高浜虚子 休め田に星うつる夜の暖かさ 尾崎放哉 何もせぬそんな一日の暖かし 菖蒲あや 内よりも外が暖か梅の花 星野立子 夜明けから雀が鳴いて暖かき 臼田亞浪 影を曳く石ころとゐて暖かし 竹下しづの女 手をついて土手やはらかく暖かく 坪内美佐尾 料理屑ちらす勝手の暖かに 尾崎紅葉 暖かき地べたを蠅の歩きけり 富田木歩 暖かき庭もうつりし鏡かな 高木晴子 暖かき日となりにける炬燵かな 松藤夏山 暖かき日を分ち住み垣低し 高木晴子 暖かくなればと言ふ日来りけり 山内山彦 暖かし好遇されて居る如し 相生垣瓜人 暖かやおたまじやくしの高泳ぎ 松藤夏山 暖かや乳首ふくみしまま寝る子 逸見静江 暖かや仏飯につく蝿一つ 飯田蛇笏 暖かや寝こけて重き背ナの児 大須賀乙字 暖かや森の木の椅子石の席 塙 告冬 暖かや汀にのびし草の蔓 上村占魚 暖かや海に向けたる足の裏 西村和子 暖かや素足で踏める魚の骨 田川飛旅子 暖かや背の子の言葉聞きながし 中村汀女 暖かや芯に蝋塗る造り花 芥川龍之介 暖かや走り穂見ゆる麦畑 松藤夏山 暖かや首のべて駱駝うづくまる 臼田亞浪 梅一輪一輪ほどの暖かさ 服部嵐雪 芹洗ふ流のなかが暖かし 中村汀女 芽あやめの秀並み狂はむ暖かさ 林原耒井 菜を干して魚干して路地暖かし 松浦靖子 ◆ あたたか ◆ あたたかきドアの出入りとなりにけり 久保田万太郎 介護士の爪切る音やあたたかき 大谷信子 あたたかし泥湧きたたす鴨の嘴 永田二三子 わがままの数だけ老いてあたたかし 柴田佐知子 あたたかや雨後の畑の土返し 白石正躬 あたたかや伏して主待つ盲導犬 峰 幸子 鉈彫のあたたかきかな菩薩像 神谷さうび バス停のトタンの壁に日あたたか 藤井美晴 あたたかし割りてたまごに黄身ふたつ 井原美鳥 手紙書く肩にインコやあたたかし 戸田澄子 あたたかや鶏押し退けて卵取る 苑 実耶 銭洗ふ風より水のあたたかし 川村亘子 土牢を覗けば意外あたたかし 田村加代 沐浴の赤子の蹴りもあたたかし 加藤峰子 あたたかや獣らはみな尾を持ちて 荒井千佐代 患者の絵飾る回廊あたたかし 志方章子 癒ゆるてふ未来なき掌のあたたかし 頓所友枝
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