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◆ 緑陰 緑蔭 ◆ 678》植物 緑蔭に憩ふ方(まさ)しくお蔭様 辻田克巳 まだ大樹ならざる橡も緑蔭に 稲畑汀子 緑蔭や矢を獲ては鳴る白き的 竹下しづの女 緑蔭や渚につなぐヨットあり 水原秋桜子 緑蔭に盲導犬の気を抜かず 志摩陽子 緑蔭にトランペットを吹く少女 三浦辰郎 緑蔭の埴輪にこにこ人を待つ 塩崎翠羊 緑蔭や老の話に齟齬多き 松島利夫 緑蔭の赤子の欠伸母にうつりぬ 大野林火 幹高く大緑蔭を支へたり 松本たかし 老木の緑蔭のいとこまやかに 富安風生 緑蔭に置かれて空の乳母車 昌治 緑蔭に黒猫の目のかつと金 川端茅舎 車窓より好緑蔭を発見す 相生垣瓜人 緑蔭にみな井戸のある村の家 冨田みのる 緑蔭や母の力のにぎりめし 関森勝夫 ぶつ切の鰡緑蔭へ海女運ぶ 羽部洞然 緑蔭に自転車止めて賭将棋 吉屋信子 病みし馬緑蔭深く曳きゆけり 澁谷 道 記念樹も老いて緑蔭つくりけり 大島民郎 緑蔭やこころにまとふ水の音 木下夕爾 緑蔭の椅子人生長く倦みにけり 木下夕爾 緑蔭を出でてふたたび老夫婦 長谷川双魚 琴弾けば緑蔭深くむせぶ声 水原秋櫻子 湯あみせし如く句碑あり緑蔭に 星野立子 緑蔭や人の時計をのぞき去る 高浜虚子 犬のいない犬鳴峠という緑陰 鮫島康子 緑陰を出て外面を構へけり 菊池三千雄 緑陰や釈迦説法の石坐る 安藤葉子 緑陰の蕊まで駆けて犬戻る 原 和子 緑陰の椅子の乱るるままに去る 直人 緑陰のふちどり常に濡れゐたり 齋藤愼爾 緑陰や蝶明らかに人幽か 松本たかし 日照雨緑陰の人書を閉ぢず 佐藤念腹 緑陰の白バラ緑ならんとす 山口青邨 緑陰のバザーに大英百科かな 井口光石 夏蜜柑むき緑陰は二人のもの 富安風生 緑陰や足にょきにょきと娘たち 清水基吉 ◆ 夏の日 夏日 ◆ 5678》時候 ユーカリを仰げば夏の日幽か 高浜虚子 夏日負ふ佐渡の赤牛五六頭 成田千空 屠牛がぶつつけ合ふ胴夏日揺る 沢木欣一 禅林に夏日まともの夕餉かな 久保田月鈴子 夏の日のわれは柱にとりまかれ 宇多喜代子 教会のステンドグラスに夏日透く 中井啓子 夏の日や薄苔つける木々の枝 芥川龍之介 夏の日や一息に飲む酒の味 路通 無造作に焼そば売られ夏日来る 加藤正尚 夏の日を淡しと思ふ額の花 野村泊月 夏の日を或る児は泣いてばかりかな 中村汀女 夏日落つ波ことごとく北を指し 齋藤愼爾 はつとして楓の上の夏日かな 岸本尚毅 海上に夏の日がある鼈甲店 五島高資 平等院かつと夏日の照り返し 六本和子 夜も光る杉とて立たせ夏の日に 川端茅舎 鵲の夏日を引きし楼の裏 桂樟蹊子 ※鵲=かささぎ 夏の日の匹婦の腹にうまれけり 室生犀星 鬼歯朶の巻葉のはじく夏日かな 室生犀星 オルガンに絵硝子の夏日灯と紛ふ 殿村菟絲子 老斑を夏日晒しの童かな 永田耕衣 三十の憂き黄炎の夏日かな 野沢節子 硬きまで乾きしタオル夏日にほふ 篠原 梵 みちのくの短き夏の日の盛り 高野素十 焼岳は夏日に灼けて立つけぶり 水原秋櫻子 川風や夏の日落つる臼の音 上島鬼貫 夏の日のうかんで水の底にさへ 上島鬼貫 夏の日やさめて窟のいなびかり 服部嵐雪
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