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◆ 夏の雨 緑雨 ◆ 5678》天文 高山寺夏の雨きて縁ぬらす 安養白翠 やみさうもなき空見上げ夏の雨 岩崎すゞ 十字架を野のものとせり夏の雨 石田勝彦 一峰は雲の上なり夏の雨 河野南畦 夏の雨きらりきらりと降りはじむ 日野草城 夏の雨明るくなりて降り続く 星野立子 夏の雨草井に日影残りけり 飯田蛇笏 夏の雨二人つきりの夜恋し 横山千夏 夏の雨農夫いちにち足洗はず 長谷部虎杖子 樋の口に溺るる蝶や夏の雨 佐々木北涯 太幹にはりつきし蝶や夏の雨 西山泊雲 夏の雨忘れてゐれば日のあたる 松瀬青々 抱卵の鶏のしづかな夏の雨 橋本夜叉 心軽ければ濡れゆく夏の雨 西村和子 うちひらく傘の匂や夏の雨 日野草城 木々の香はまこと父の香夏の雨 鷲谷七菜子 青時雨この池のもの死に絶えて 依光陽子 夏雨や川虫淵をながれ出る 飯田蛇笏 夏雨に夜明けてゐたり大伽藍 中川宋淵 温泉泊り今日は夏雨して静か 星野立子 奈良にあり鹿も我らも緑雨かな 坪内稔典 白き花ばかり目につく緑雨かな 長谷川智弥子 緑雨いまいのちの音か後円墳 松本 旭 色ケ浜ゆふべの緑雨蛸壺に 沢木欣一 ◆ 夏の夕 夏夕 ◆ 5678》時候 イヤリングはずし女の夏の夕 上田千穂子 すがる子のありし浴みや夏の夕 石橋秀野 夏の夕菅笠の旅を木曽に入る 高浜虚子 帆を以て帰るを夏の夕とす 山口誓子 雲焼けて静かに夏の夕かな 高浜虚子 何も映らぬ夏夕ぐれの水たまり 津沢マサ子 夏夕ベ淡竹草履にはやも慣れ 宇多喜代子 夏の夕ベオルガンの鳴るながい街 津沢マサ子 湯のたぎり気遠くなりぬ夏夕 高澤晶子 夏夕ベ鹿の首のありありと 宇多喜代子 峰二つあらそひ隠る夏夕ベ 原 裕 ◆ 夏の宵 夏の夜 ◆ 5678》時候 疲れ来てうすき膝なり夏の宵 長谷川かな女 夏の宵うすき疲れのさざ波に 平井照敏 上陸の眼に犬尿る夏の宵 高橋兎亀夫 夏の宵医師の白衣は感傷なし 藤本阿南 言ひたげなくちびる浮かぶ夏の宵 谷口桂子 名の一字ふと目が止まる夏の宵 谷口桂子 夏の宵人慰むに鶏を焼く 船越淑子 夏の夜の聖書の自動販売機 夏石番矢 鯛焼きに雌雄なくて夏の夜 田中信克 夏の夜の森の匂ひの髪ほどく 野澤節子 夏の夜北行く旅の寝台車 高橋妙子 夏の夜の淡路泊りの遠電話 塙 きく 夏の夜や崩れて明けし冷し物 松尾芭蕉 夏の夜の獣めく手を洗いおり 青木栄子 漂泊を誘ふ夏の夜のジャズ 守屋明俊 夏の夜の短き夢に火の粉かな 小檜山繁子 夏の夜の闇に捨て置く死語いろいろ 河合早苗 夏の夜の木をこぼれたる蝶々かな 永田耕衣 会ひて安し夏の夜母の横坐り 村越化石 羊水は夏の夜に似し匂せり 辻美奈子 静脈に妬心満ちゆく夏の夜 谷口桂子 好色のてのひら夏の夜の仙人掌 櫛原希伊子 夏の夜に風呂敷かぶる旅寝かな 小林一茶 夏の夜は明くれどあかぬまぶた哉 荒木田守武 四時に烏五時に雀夏の夜は明けぬ 正岡子規 夏の夜やたゝいてまはる臀 尾崎紅葉 猫に猫つきくる夏の夜となりぬ 宇多喜代子 段々に夏の夜明や人の皃 小林一茶(42) 夏の夜や木魂に明くる下駄の音 松尾芭蕉 朝がほや夏の夜ならば夢の内 千代尼 夏の夜のちぎりおそろし橋の霜 千代尼 春の夜の面ざしもなし夏の月 上島鬼貫
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